一緒にいてもひとり~アスペルガーの結婚がうまくいくために~
カトリン・ベントリー著:翻訳 室崎 育美
海外の有名なカサンドラ書籍の代表作といわれています。
読む前からハラハラドキドキです。
こういったアスペルガーを取り扱った書籍は、感情移入をして辛くなることがあるので、多少の元気があるときに読むことをおすすめします。
※一部ネタバレを含む内容もありますので、これから読まれる方はお気をつけください。
スイス人である著者がオーストラリアの男性と結婚をし、新婚当初から喧嘩が絶えません。
国際結婚であった為、文化の違いの為なのかと思い妻のカトリンは歩み寄ろうとします。
然し、妊娠中の不可解な言動や思いやりのなさに、何かおかしいと違和感を感じ続けて十何年、、。やっと夫がアスペルガーと診断されます。
それからは妻が会話の仕方や言葉に工夫をして、お互いを認め合いながら夫婦円満に過ごせるように。
今では夫がアスペルガーということを気にならない程まで修復したというお話です。
良かった点は、アスペルガーとカサンのドラ関係を【サボテンとバラ】に例え、
育ってきた環境・特性が真逆であってもお互いを尊重しあうことで共存することができるという分かりやすい例えです。
サボテンはバラにはなれないし、バラはサボテンにもなれない。
当たり前なんですが、本質はそこにあると。
この本にでてくるカトリンだからこそ今の関係になれたのではと思いました。
勇敢で、芯の強い女性なんです。あまりに夫の言動が酷くて、愛情も枯渇するであろう状況でも前を向くカトリン。
凄すぎて、なんだか現実離れしたおとぎ話を読んでいるような、そんな不思議な感覚になりました。
なので、教科書を眺めているような、理想はそうなんだろうけれど現実はそうはいかないよと言う気持ちになるかもしれません。
中々アスペルガーのパートナーとうまく生活をしている成功例がないので、
この本を読んで海外だけれども実際にうまくいくケースもあるんだ、、、。
と希望を見出したい方にはおすすめです。
冷めた目で読んでしまいそう、、、もう修復する気などないわという方にはおすすめしません。
私は完全に、カトリンのようには無理だなと、傍観者の様な気持ちでいました。
うまくいく本当に稀有なケースです。
国際結婚ということで、当初はある意味妥協できた部分があったのかもしれませんが、
そうではないと知ってからのカトリンの前向きさ、慈悲的な歩み寄りは中々真似できることではありません。
勿論夫のギャビンが自身のカウンセリングを受け、ASであることを自覚できたという点はかなり大きいかと思いますが。
普段ネットなどでカサンドラの方の意見を読むと、
皆さん本当に包容力があって優しくて、面倒見が良くて、我慢強いと思うのです。
なんでこんなにパートナーに尽くしても尽くしても、報われないのだろうか。
恩を仇で返すようなことを平気でされ、それでも尚一人で背負い込んで頑張らねばならないのか。
かなり理不尽に感じる場面ばかりです。
この本では、そんな【カサンドラは与えっぱなし】状態が何故おこるのか。
どうして一方的にエネルギーを差し出さなくてはならないのか。
その仕組みに関してとても明快に語っています。
エネルギーの交換は期待できない、何故ならASは不安やストレスが常に大きいから。
定型発達の側が、自分自身でエネルギー補充できる方法を探した方が建設的。
ということですね。
これをどう捉えるかだと思います。
ああ、やっぱり夫から支えてもらうことは、支え合うという事は諦めねばならないのね、と絶望を感じて別れを意識するかもしれません。
夫との関係、夫婦での心の支え合いに固執する方にとっては酷かもしれません。
もしくは、夫のことを諦める代わりに、新しい自身の世界を広める機会を作ることができるチャンスになるのかもしれません。
読み手のその時その時の心理状態にも大きく左右される一冊だと感じました。
私は当初このエネルギー理論を読んだ時、絶望と疲弊を感じました。
第三者に頼れるわけではなかったですし、理解者がとにかくいなかった。
カサンドラの辛さはそこですしね。
新たに頼れる人を探す気力もなかったですし、それでも毎日の生活を歯を食いしばりながら迎えるしかなかったわけです。
もう絶望以外の何物でもありません。
そしてとある出来事があり、もう完全に心が折れたというか、夫に期待をすることは無理なのだと悟りました。
良い意味での諦めです。
諦められることで、普通の夫婦(助け合い)ではない=負の感情をどこにぶつけよう。
怒りであったり感情のエネルギーをどこに向けよう。
本気で考えることができました。
このままじゃ本当に潰れる危機感がありました。
結果、前々から挑戦したかったこと=このブログを開設することができました。
エネルギーの方向を変えた、変わったわけです。
そう考えると、当初の読後のあの絶望感から日がかなり経ってはいますが、
結果論としては、著者カトリンのいうエネルギー論の推奨パターン通りの生活に自然と向かったのです。(後から気づきましたが。)
なので、結局人間は自分の納得のいくまで経験してみないことには、
動くにも悩みが付きまとい行動できなくなってしまう。
それならば、諦めが付く(納得できる)まで思ったようにやってみて、
それから考えて動くしかないのではと思いました。
ですので、この本の言う通りにやれば解決できるとかそんな生ぬるいわけではないので、そこは期待をしないで読まれた方が良いと思います。

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